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【chikiの著作権のおはなし 番外編】 著作物の創造と想像(2)

 こんにちは、chikiです。

 クリケンから紹介いたしました、情報処理学会の特別セッション、chikiも札幌から聞きにいきますので、東京でお会いいたしましょう。
 そのようすは、こちらのブログでもご紹介する予定ですが、みなさまもぜひ足をお運びくださいませ!

 さて、KAITOの誕生日ですけれど、2月17日ですからねっ!と、わたしたちからは申しあげるのです。
 けーたんがお祝いの準備をととのえましたので、こちらもなにとぞよろしく!

 それでは、前回に引き続きまして、弊社伊藤のインタビュー記事「著作物の創造と想像」をお届けします。

(承前)

日本弁理士会:これだけ社会的に影響を持つようになった『初音ミク』ですが、クリプトンさんは、『初音ミク』をはじめ貴社のVOCALOID関係の著作権について、どのようなスタンスをとっておられるのでしょうか。

伊藤:まず、著作権法とは本来、作品を作ったクリエーターに正当な対価を保証して文化活動を促進させるためのしくみだと認識しています。
 ですので、弊社としては、弊社製品の価値に便乗して不当に儲けようとする行為と、弊社および弊社製品の価値を著しく傷つける行為を除き、クリエーターの皆様に弊社製品のキャラクターを二次創作していただくことに対して、著作権による縛りを過度にかけることは基本的に必要ないというスタンスをとっています。
 今までのキャラクタービジネスでは、権利者は二次創作に対しては黙認し、見過ごせない行為に対して必要なときに法的な措置を行うのが普通でした。しかしそれでは、二次創作クリエーターにとってはなにができてなにができないのかわからない綱渡りのような状態が続くことになります。クリエーターの立場が不安定であることは好ましいこととは思えません。
 とはいえ、クリエーターおひとりずつに対して、その二次創作行為に一件ずつ許諾をおこなう、というのも現実的には難しいことです。
 そこで弊社は、クリエーターの皆様に「こうした二次創作であれば行えます」という内容を示した上で、弊社キャラクターを著作権法の枠を超えて使っていただけるような枠組みをつくっています。たとえば、弊社キャラクターの二次創作物として最も数が多いイラストであれば、弊社が運営するウェブサイト「ピアプロ」に投稿していただくことで、弊社とイラストの作者双方の著作権処理が自動的に行われ、そのイラストを他のクリエーターにお使いいただけるようにしています。
 弊社は現在、このような二次創作と著作権に対するスタンスを、「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」としてまとめ、弊社サイトで公開しています。<http://piapro.jp/license/pcl

日本弁理士会:いま、お話に出ました、PCLというシステムとはどのようなものなのでしょうか。

伊藤:PCLとは、クリエーターが営利を目的とせず、かつ対価を受け取らない場合であれば、弊社にご連絡いただかなくても弊社キャラクターを利用できるようにするライセンス契約です。
 ウェブ空間の発展によってキャラクターを利用した作品の数は莫大に増えましたが、そのほとんどは良識的な利用であると考えています。そのような作品については、弊社や第三者の権利を侵害せず、公序良俗に反しない限り「原則OK」というお約束をするのがPCLというシステムです。
こちらも、動画により説明した弊社サイトがありますのでご覧ください。<http://piapro.jp/intro/

日本弁理士会:それでは、ワンダーフェスティバルの当日版権は、どのような位置づけになるのでしょうか。

伊藤:ワンダーフェスティバルでは、二次創作物を有償で頒布されるのが通常ですから、弊社製品のキャラクターについてはPCLの許諾範囲外となります。
 ただし、この頒布行為は、数量、期間、場所が限定されたものですので、適切といえるものについては許諾を行わない理由はございません。そこで、当日版権システムによってクリエーターに許諾を差し上げたうえで頒布を行っていただいております。
 当日版権は、こうした意味において権利者とクリエーター双方の調整を図るよいシステムだと思います。

日本弁理士会:最後に、『初音ミク』を含めたVOCALOIDキャラクターの保護者として、クリエーターさんにメッセージをお願いいたします。

伊藤:従来の一般的な「キャラクター」が、出現したときにはすでに完成されたものだとすれば、弊社製品のキャラクターは、弊社のオリジナルを共通の土台として、クリエーターがおひとりごとに自ら創作してゆくものなのだろうと思います。
 そうしたキャラクターの権利を有する立場として申し上げますと、クリエーターの皆様には、「キャラクターに関わる全てのひとびとの存在を意識していただければ」と思います。皆様の創作表現のひとつひとつが良くも悪くも、めぐりめぐって周りの人々に波及していきます。その効果が積み重なって、『初音ミク』をはじめとする弊社製品のキャラクターを成立させていること、創作がおひとりのためのものだけではなくなっていることに思いを及ぼしていただければと願っています。

日本弁理士会:なるほど、新たな「創造」を行う際には、それまでに関わってきた人たちのことを想い描くという「想像」が必要ということですね。ありがとうございました。
(了)

(知規)