こんにちは、chikiです。
札幌もここ二日間はすっかりあたたかくなり、オフィス内も暖房がききすぎている感じです。
わたくしたちが「著作権の雪かき」なんてことを申し上げてからもうすぐ一年になりますが、今年もさらなる雪解けをめざします。
さて、今回も前回に続き、作品の「パクリ」について、権利者であるみなさまクリエイターの視点から、おはなしします。
chikiは「ピアプロ」の運営にも関わっていますが、会員のみなさまから、「この作品はあの作品のパクリではないでしょうか」という情報をときどきお寄せいただいています。
一目見てコピーだとわかるのはいいんですが、そうでないもの、これがなかなか困るんです。それを判断していいのは裁判所だけで、仮にchikiに裁判官と同じ能力があったとしても、判断できないものもあるんです。
では、その裁判所がどういうふうに判断するかというと、どうもちょっとみなさまの感覚とはちがうかもしれないようです。ちょっとこんな例をかんがえてみましょう。
クリケンさん(仮名)は、若い男性を対象として、自分で描いたイラスト付きの
「この冬、男のアウトドア!」という本を出版していました。
ある日クリケンさんは、クリプトン観光(仮名)が出しているパンフレット「たのしい冬のすごしかた」を
たまたま目にして、びっくりしました。
その本にたくさん出てきた若い夫婦のイラストのうち、夫のキャラクター「GAITI」が、クリケンさんが
本に描いたお兄さんのキャラクター「KAITO」(仮名)のイラストにそっくりだったからです。
ちょうどそのころ、クリケンさんのところに、このパンフレットのイラストレーターchiki(仮名)から
「GAITIはKAITOを参考にして描きました。このたびはクリケンさんの著作権を侵害し、
たいへん申し訳ありません」というお詫びが届きました。
そこでクリケンさんは、chikiに対してはその詫びを受け入れて、クリプトン観光に対し
「パンフレットを配るのをやめてください」と言いました。
ところがクリプトン観光は
「あなたのキャラクターは若いお兄さんでしょう?
わたしたちのキャラクターは若い夫婦の夫であって、キャラクターがぜんぜん違いますよ。
chikiが何を言ったかは知りませんが、ふたつは別の物で、あなたの権利は侵害してません」
と言うのです。
さて、法律ではこういう問題をどう考えるでしょう?
普通に考えれば、chikiが謝罪している以上、クリケンさんの言い分が通りそうですね。
ところが、これがなかなか簡単にはいかないのです。
chikiがどう言おうが、実際に絵を見比べて、クリプトン観光の言うとおり、それぞれが別の絵だと認められてしまえば、クリケンさんは負けてしまうのです。
このケースは、実際にあった裁判をモデルにしています。
裁判の判決文にリンクを貼っておくので、興味のある方は見てください。
長い文章ですが、17ページからの10ページ分くらいを読めば、雰囲気だけでもつかめます。
もちろん、実際にパクリだというときには、裁判になることなんかほとんどなくて、パクリ=ダメ、ってことになって、それでケリがつくことがほとんどです。
ただ、「パクリ」ということと「似ている」ということの区別というのはとてもむずかしくて、たしかに似ているように見えても、でも簡単に「パクリ」だと言えないんじゃないんだろうかと、chikiはそんなことを思うこともけっこうあるのです。
「パクリ」ということと「似ている」ということ、そして「著作権の侵害」ということは、いつもイコールだとはかぎりません。
みんながクリエイターであり権利者でもあるCGMの時代、こういうことも知っておいていただけたらなと思って、今回はこの話をしました。
さいごにこれだけは申しあげますが、これは「いい・わるい」「創作としての価値の高い・低い」とはぜんぜんべつのお話です。
「パクリじゃないから」「著作権の侵害じゃないから」ということは、それが許されるかどうかということとはおなじでないことは、申し上げるまでもありまんせよね?
それでは、また!
(知規)