ピアプロ企画班です。
引き続き、「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」の各条文につきしまして、解釈や意図を説明いたします。今回はPCLの第2条~第3条の内容となります。4条以降につきましては後日説明いたします。
なお、関連するエントリーは、「PCL解説」タグで一覧いただけます。
PCL解説(2条~3条)
第2条について
第1項
第2条(著作権法その他適用法との関係)
1. 当社キャラクターは、著作権法その他の適用法令によって保護されます。
第1条の解説でもご説明しましたように、当社キャラクターはまずはじめに著作権法をはじめとする日本国の法令によって保護され、その後にPCL等の当社規約によって追加の利用許諾および利用条件を定めています。
現行の著作権法は現実と合致しない様々な部分を多く抱えていますが、一方で現代社会の様々な慣習の基本となっているものでもあります。このライセンスは利用の実態に鑑みて不都合を補うためのものであり、考え方の基本は知的財産権関係法令にあります。
第2項
2. 本ライセンスは、著作権法その他の適用法令において認められる、利用者による当社キャラクターの利用を妨げるものではありません。
日本国の著作権法は、第30条から第49条までを「著作権の例外」として、著作権の効力の及ばない著作物の利用行為を具体的に定めています。この例のように、著作権その他の日本国の法令によって利用者に認められている利用行為については、PCLはなんらの制限をおよぼすものではありません。ただし、第49条により、例えば私的利用のために二次的著作物を作成したとしても、それが後に著作権法上認められていない目的のために公表された場合は著作権法違反となります。
著作権法上認められた著作物の「原則OK」となる利用範囲は、インターネットの発展と、それに伴って二次創作文化が台頭した現代の実情からは狭い部分もあります。こうした状況に対する対策としては、「日本版フェアユース」など、複数のアイディアが提唱されています。PCLはこうした流れの中における、現代社会に対する実験的な提案であると、当社は位置づけています。
第3項
3. 当社は、当社キャラクターの改変物について、著作権を専有しています。
第1条第1項第4号で定義したように、PCLにおける改変物とは、原著作物たる当社キャラクターに手を加えたが、そこに新たな創作性が付与されていないものを言います。したがって、このような改変物には、改変を行った利用者の権利は発生せず、これについては当社がその権利を専有いたします。
第4項
4. 当社は、著作権法第28条に基づき、当社キャラクターの二次的著作物の利用に関し、著作権法第21条から第27条までの権利のうち、当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有しています。
この条文は、著作物の原著作者は、原著作物と類似する二次的著作物(三次的著作物以下を含む)に関して、著作権法21条から27条の権利を有するという意味です。これによって例えば、利用者の制作した二次的著作物の権利が侵害された場合には、当社が利用者と共同して利用者の権利を回復することができるようになります。
なお、確認のために申し添えますと、二次的著作物の制作者は、ご自身が創作された部分に限って、ご自身の著作権を有しています。
仮に原著作物に一切アクセスせず、二次的著作物のみに依拠して三次的著作物を作成された場合においては、それが原著作物の特徴的な部分に類似していれば原著作物をもとにした二次的著作物となります(大阪地裁判決平成11年7月8日判例時報1731号116頁)。すなわち、当社キャラクターの原画像を一度も見たことがなく、二次的著作物だけに基づいて三次以降の作品を制作されたとしても、その作品は当社キャラクターに独特な創作的表現を有している限り、当社キャラクターの二次的著作物であるとされます。
第3条について
第1項第1号
第3条(利用許諾・利用条件)
1. 当社は、利用者に対し、当社キャラクターについて、本ライセンスの各条項およびガイドラインに従い、利用者自身による以下の行為を非独占的に許諾いたします。
(1) 当社キャラクターの二次創作物を作成すること。
当社キャラクターに独特な創作的表現を残したまま、これを改変したり翻案する権利は、著作権法で特別に認められた場合を除き、当社が専有しています。本号は、これら改変または翻案の権利を、第2項に定める利用条件をお守りいただいた上で、利用者のみなさまに許諾するためのものです。
第1項第2号
(2) 自ら作成した当社キャラクターの二次創作物を複製、上演、上映、公衆送信、展示その他頒布すること。
利用者が制作した二次創作物のうち、改変物と二次的著作物に関して本号に列挙した行為を利用者におこなっていただけるよう、これを許諾するための条文です。
「複製」とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」をいいます。利用者が自分のPC上で制作した画像ファイルをウェブ上で公開するためにサーバにアップロードする行為も、複製に含まれます。
「上演」とは、「演奏(歌唱を含む)以外の方法により著作物を演じること」をいいます。
「上映」とは、「(後に述べる)公衆送信されるものを除いた著作物を映写幕その他の物に映写すること」をいいます。当社キャラクターを含む映像をスクリーンやディスプレイに映し出すことをいいます。
「公衆送信」とは「不特定の者または特定多数の者によって受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと」をいいます。すなわち、テレビ放送やインターネットによって、制作した二次創作物を広く公衆に見せることをいいます。
「展示」とは、上映や公衆送信によらず、著作物を多くの人の目に触れる場所に置くことをいいます。イラストやフィギュアの展示会を行ったり、彫刻を野外に設置したり、コスプレによって衣装を見せる行為はこれに該当します。
「頒布」とは「複製物を不特定の者または多数の者に譲渡し、又は貸与すること」をいいます。
なお、ここでの二次創作物の利用は、すべて「自ら作成したもの」に限って許諾されています。他者が作成した二次創作物の利用については、PCLでは許諾しておらず、原則として別途当社の許諾を得る必要があります。
この別途の許諾を簡便に行える場として、当社では「ピアプロ」を用意しています。ピアプロに投稿された二次創作物は、ピアプロ利用規約および各二次創作物に付与されたライセンス条件をお守りいただくことで、ピアプロ会員様に限り、作者以外の方がご利用になれます。
第1項第3号
(3) 自ら作成した当社キャラクターの二次創作物のタイトル、説明文等に当社キャラクターの名称の全部または一部または愛称を使用し、または当該二次創作物に当社キャラクターの名称の一部を用いた独自の名称を付与すること。
当社キャラクターの名称は、当社キャラクターの非営利無償での利用に伴うときは、自由にお使いいただくことができます。この件に関するお問い合わせが多かったことから、非営利無償での利用に限定された範囲を取り扱うPCLにおいては、確認の意味において、このことを明記いたしました。
また、当社キャラクターの二次創作物に当社キャラクターの名前の一部を用いてオリジナルの名前をつけるという創作行為も多く行われています。このような命名につきましても、非営利無償での利用に伴うときは、これを行うことができます。
第2項第1号
2. 利用者は、前項の利用にあたり、以下の各号に掲げるすべての利用条件を遵守するものとします。
(1) 利用者は、当社キャラクターの二次創作物を営利目的で利用してはならず、また非営利目的であっても、あらゆる名目の対価を徴収しまたは報酬を受けて利用してはならないものとします。
「営利目的での利用」とは、その行為によって利益を得ることを企図する利用をいいます。当社キャラクターの二次創作物およびこれを含む物品を無償で配布したとしても、それが企業や商品の知名度を上げる目的であったときには、PCL違反となります。
また、個人事業主(芸能人、スポーツ選手、芸術家などを含み、これに限られません)が、業として当社キャラクターの二次創作物を利用する場合も、営利目的での利用となります。
第2項第2号
(2) 利用者は、ガイドラインに別途定める場合を除き、原則として必ず当社キャラクターの二次創作物を作成して利用し、当社キャラクターをそのままの形で利用してはならないものとします。
PCLでは、原則として当社キャラクターの公式画像に依拠して制作された二次創作物に限って、当社キャラクターの利用を許諾いたしております。
ただし、当社サイト内「VOCALOID2」コーナーにおいてダウンロードを許諾している公式画像の利用については、「キャラクター利用のガイドライン」に定める内容をお守りいただいた上で、ご利用いただくことができるものとします。また、絵画の著作物を手書きで複製する「模写」については、描き手の画風やその技術の巧拙を問わず、著作権法では機械的複製と同様に「複製」として扱われるため、PCL第1条第1項第5号に定める「二次創作物」のどれにも当たりませんが、これも「キャラクター利用のガイドライン」において、二次創作物と同様の取扱ができるようにしております。
第2項第3号
(3) 利用者は、第三者の知的財産権その他一切の権利を侵害してはならないものとします。
二次創作物の制作にあたっては、他者の著作物に特徴的な創作的表現を、無断で流用してはいけません。
第2項第4号
(4) 利用者は、当社キャラクターまたはその二次創作物の利用にあたり、当社キャラクターおよび各二次創作物の著作者の名誉声望を毀損してはならないものとします。
当社キャラクターは、PCLの許諾する範囲で自由に二次創作作品とすることができますが、いくつかの制限もございます。本号は、当社キャラクターの著作者であるデザイナーの皆様の名誉や声望を傷つけるようなかたちでの二次創作物の制作を禁止するための条文です。
また、二次創作物の作者様の名誉や声望を傷つけるような行為もまた行ってはならないと定めています。
第2項第5号
(5) 利用者は、当社キャラクターまたはその二次創作物を、他者を誹謗中傷または侮辱し、あるいは公序良俗に反する態様で利用してはならないものとします。
当社キャラクターの二次創作物を、他者を誹謗中傷または侮辱する目的で利用することを、固くお断りいたします。
また、公序良俗に反する態様での利用も禁止いたします。公序良俗の定義は時代によって様々に変化するため、ここからが公序良俗に反するという統一的な基準を設けることは極めて困難です。したがって、公序良俗に反するか否かは、個別の二次創作物ごとに、どの程度社会の利益や倫理に反するかを判断することになります。
第2項第6号
(6) その他、ガイドラインに定める条件を遵守するものとします。
PCLでは記述しておりませんが、当社は、当社に無断で法人が当社キャラクターを利用することを、営利非営利の別を問わず許諾しておらず、その旨をキャラクター利用のガイドラインに記しています。当社キャラクターの利用を希望される法人各位におかれましては、事前に当社までご相談くださりますよう、お願い申し上げます。
第3項
3. 利用者が第1項で許諾された利用を行うときは、二次創作物に添えてガイドラインに別途定める表示を、視認することが容易な合理的な方法で表示するよう努めるものとします。
当社キャラクターの二次創作物を公表するときは、当該二次創作物自体あるいはその説明文に、①PCLによる許諾の旨、②PCLの所在を示すURL、③利用しているキャラクターの名称、④当社社名(以下、これらをまとめて「PCLクレジット」といいます。)を表示するよう努めてください。
以下にPCLクレジットの例文をお示しします。
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社のキャラクター「巡音ルカ」を描いたものです。
なお、二次創作物の形態によっては、このようなクレジットを表記することが難しい場合もございます。たとえば、野外で展示される彫刻などが考えられます。そのような場合にあっては、PCLクレジットの表示を省くことができます。
第4項
4. 利用者は、当社が本ライセンスで許諾した権利を第三者に再許諾することはできないものとします。
当社キャラクターの二次創作物には、PCLは付与されません。すなわち、当社キャラクターの二次創作物については、原則としてその作者以外の方は利用することができません。
ただし、当社が運営するウェブサイト「ピアプロ」に投稿された作品については、ピアプロ利用規約および各作品に付与されたライセンス条件をお守りいただくことで、ピアプロ会員様に限りご利用することができます。
今回は以上です。引き続き連載していきます。
(ピ企)