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【chikiの著作権のおはなし 第16回】 第2章 エルロック・ショルメの憂鬱(4)

 こんにちは、chikiです。

 前回は、「キャラクターとは、ぼんやりしたよくわからないなにか」ということだけど、それはおかしくない?というところで終わりました。
 今回は、この謎について迫り、「キャラクター」というものを解きあかしにかかります。

 前回もふれたように、たとえば「初音ミク」というキャラクターなら、

・藤田咲さんの声をもとにして作った歌声データベース
・KEIさんがお描きになった絵

 というように、キャラクターにはみんな、その特徴をしめす、つよいシンボルがあります。
 これは、「はっきりとした、ゆらぎのないもの」であることは、まちがいありません。

 でも、ちょっと見方を変えてみましょう。
 まず、ピアプロで、「初音ミク」のタグでイラストを検索してみました
 みなさまにお描きいただいた、とても多くのイラストがありますけれど、それらはひとつずつ、みんなちがうものです。
 でも、これだけちがう絵ばかりなのに、みなさんはそのどれを見ても、ミクだって感じられますよね?

 ミクの歌声だってそうです。
 多くのクリエイターの皆様がさまざまにミクを使うことで、いろいろな表情・表現をもったミクの声が生まれました。来月リリースの『初音ミク Append』によって、その声の色どりは、もっとゆたかにになるんだろうとおもいます。
 でも、それだけちがうたくさんの声を聞いても、やっぱりそれは、ミクの声だって感じられますよね?

 つまり、「ミクだと思えるような絵を見たとき」「ミクだと思えるような声を聞いたとき」にみなさんが頭の中に思い浮かべる「これがミクだと思えるもの」、これこそが「キャラクター:初音ミク」の正体なのです。
 これは、見ることも聞くこともさわることもできない、まさに「よくわからないなにか」なのですね。

 わたくしたちクリプトンが、「こんな感じなのかな」と思い浮かべた「キャラクター:初音ミク」に、歌声データベースやイラストという、具体的な表現が与えられます。この表現を通して、こんどはみなさんが「キャラクター:初音ミク」を思い浮かべることができます。
 そして、その「キャラクター:初音ミク」をみなさんがさまざまに表現する。それぞれぜんぜん違う絵や歌なのに、でもそれらが「初音ミク」だとわかるのは、「キャラクター:初音ミク」をみなさんが共有できているから、なのですね。

 この連載の第3回を思い出して下さい。
 この回で、chikiはこんな画像を載せました。覚えておられますか?

chiki100119.jpg

「著作権は侵害してはならない」(キリッ

だっておwwwwwwwwwwwww

 これが、日本のインターネット空間で有名な「やる夫」というキャラクターであることは、「やる夫」を知っている人なら、すぐにわかります。
 一般的に「やる夫」のキャラクターを表すデザインは、ここではモザイクに隠されてほとんど見ることはできません。なのに、これを見ただけで「やる夫」だとすぐにわかるのはどうしてでしょう?
 それは、特徴のある口調と、モザイクに隠れた輪郭を見た人が、頭の中に「キャラクター:やる夫」を思い浮かべることができるから、なんですね。

 まとめにはいりましょう。
 もし「キャラクター」というものが「絵そのもの」「音そのもの」「セリフそのもの」だとしたらどうでしょう?ちょっとでもそれらが違ったら、似ているけど別のもの、になってしまいます。
 でも、「キャラクター」は「よくわからないもやもやとしたなにか」だからこそ、ちょっとくらい違っていても、「おなじもの」だとわかります。
 ちょっとくらい違っていても、みんなが「おなじもの」を思い浮かべることができる。キャラクターというのがそういう存在だからこそ、わたしたちは大昔から、キャラクターの登場する物語をつくったりして、みんなでたのしむことができたんですね。

 「キャラクター」というものを「よくわからないなにか」と説明することの意味は、こういうものです。
 でも、二回前を思い出して下さい。
 わたしたちはもうひとつ、キャラクターというものに別の説明をしました。
 なぜ、別の説明が必要だったのか。
 みなさんもルパンやホームズになったつもりで、謎に挑戦してみてくださいね!
 それでは、また!

(知規)