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【chikiの著作権のおはなし 第11回】 第1章 「ケンリシャ」いったい何者だ?(10)

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 こんにちは、chikiです。
 札幌もここ二日間はすっかりあたたかくなり、オフィス内も暖房がききすぎている感じです。
 わたくしたちが「著作権の雪かき」なんてことを申し上げてからもうすぐ一年になりますが、今年もさらなる雪解けをめざします。

 さて、今回も前回に続き、作品の「パクリ」について、権利者であるみなさまクリエイターの視点から、おはなしします。

 chikiは「ピアプロ」の運営にも関わっていますが、会員のみなさまから、「この作品はあの作品のパクリではないでしょうか」という情報をときどきお寄せいただいています。
 一目見てコピーだとわかるのはいいんですが、そうでないもの、これがなかなか困るんです。それを判断していいのは裁判所だけで、仮にchikiに裁判官と同じ能力があったとしても、判断できないものもあるんです。

 では、その裁判所がどういうふうに判断するかというと、どうもちょっとみなさまの感覚とはちがうかもしれないようです。ちょっとこんな例をかんがえてみましょう。

  クリケンさん(仮名)は、若い男性を対象として、自分で描いたイラスト付きの
  「この冬、男のアウトドア!」という本を出版していました。
  ある日クリケンさんは、クリプトン観光(仮名)が出しているパンフレット「たのしい冬のすごしかた」を

  たまたま目にして、びっくりしました。
  その本にたくさん出てきた若い夫婦のイラストのうち、夫のキャラクター「GAITI」が、クリケンさんが
  本に描いたお兄さんのキャラクター「KAITO」(仮名)のイラストにそっくりだったからです。

  ちょうどそのころ、クリケンさんのところに、このパンフレットのイラストレーターchiki(仮名)から
  「GAITIはKAITOを参考にして描きました。このたびはクリケンさんの著作権を侵害し、
  たいへん申し訳ありません」というお詫びが届きました。
  そこでクリケンさんは、chikiに対してはその詫びを受け入れて、クリプトン観光に対し
  「パンフレットを配るのをやめてください」と言いました。
  ところがクリプトン観光は
  「あなたのキャラクターは若いお兄さんでしょう?
   わたしたちのキャラクターは若い夫婦の夫であって、キャラクターがぜんぜん違いますよ。
   chikiが何を言ったかは知りませんが、ふたつは別の物で、あなたの権利は侵害してません」
  と言うのです。

 さて、法律ではこういう問題をどう考えるでしょう?
 普通に考えれば、chikiが謝罪している以上、クリケンさんの言い分が通りそうですね。
 ところが、これがなかなか簡単にはいかないのです。
 chikiがどう言おうが、実際に絵を見比べて、クリプトン観光の言うとおり、それぞれが別の絵だと認められてしまえば、クリケンさんは負けてしまうのです。

 このケースは、実際にあった裁判をモデルにしています。
 裁判の判決文にリンクを貼っておくので、興味のある方は見てください。
 長い文章ですが、17ページからの10ページ分くらいを読めば、雰囲気だけでもつかめます。

 もちろん、実際にパクリだというときには、裁判になることなんかほとんどなくて、パクリ=ダメ、ってことになって、それでケリがつくことがほとんどです。
 ただ、「パクリ」ということと「似ている」ということの区別というのはとてもむずかしくて、たしかに似ているように見えても、でも簡単に「パクリ」だと言えないんじゃないんだろうかと、chikiはそんなことを思うこともけっこうあるのです。

 「パクリ」ということと「似ている」ということ、そして「著作権の侵害」ということは、いつもイコールだとはかぎりません。
 みんながクリエイターであり権利者でもあるCGMの時代、こういうことも知っておいていただけたらなと思って、今回はこの話をしました。

 さいごにこれだけは申しあげますが、これは「いい・わるい」「創作としての価値の高い・低い」とはぜんぜんべつのお話です。
 「パクリじゃないから」「著作権の侵害じゃないから」ということは、それが許されるかどうかということとはおなじでないことは、申し上げるまでもありまんせよね?
 それでは、また!

(知規)